そのグラフは誰のバイアスか?

「グラフがないとわからない」の話に戻ります。
あなたの部下が、数値が重要そうな事柄を、文章だけで説明しようとしている状況を想像してみて下さい。

決め手のない言葉の羅列が、雨の水滴だとしたら、まずそれを体感します。

そのとき反射的に「何言っとるかわからん。グラフ作れ」などの短絡的な反応はあまり適切とは言えません。

「グラフなどがあれば、より感覚的な理解を共有しやすいように思うが、それが無いのはなぜかな?」
など、要領を得ない説明者の背景に関心に基づいた質問を投げかけることで、話が進展することはよくあります。

いくつか例を挙げます。

1.まとめられないから相談をし、まとめようと努力している

→安心して考えられる相手だと思われているようです。その信頼感をベースに『まとめ方スキルの指導』をしましょう。

2.共にまとめるために尽力すべき立場ではないか、と逆に部下からハッパをかけられている

→こう思われるということは、よほど勘違いした部下か、もしくはあなたがよほど勘違いしたユルイ上司か、どちらかの可能性があります。教育うんぬんよりまず自分たちが置かれている状況を理解するよう努めましょう。

3.チャートの作り方を知らない

→理屈は頭に浮かぶが表現方法が未熟なタイプです。1と同じように『まとめ方スキルの指導』が必要ですが、グラフ作成にポイントを絞って教えてあげればよいでしょう。

以上、3例ほど示しましたが、いずれにしても、「こいつはなぜ、こんなにとりとめない話を自分にぶつけてくるのだろうか?」という体感に基づく疑問を解消するために、質問してみることが重要です。

「お前のいうことは何だかわからんから、とにかくグラフを作れ」では、空に向かって「雨はオレが家についてから降らせろ」と言うようなものです。傘を用意しないかぎり、不毛なコミュニケーションでムダに時間を浪費するばかりで、永遠に問題は解決しません。