そのグラフは誰のバイアスか?

前ページで部下だった頃の感覚に戻ってもらいましたが、今度は現在の立場へ戻ってください。

今のあなたが、何か重要な判断をするとします。

そういった重要な意思決定では無意識に、フィルターのかかっていないナマの情報を受け止めた時の、自身の体感を重視しているのではないでしょうか。

「景気」とか「購買意欲」とか「原油価格高騰」などは、普段なら使いやすい言葉ですが、ここ一番の時にその類の抽象概念はほとんど意識に上らないでしょう。

反対にナマの情報は『自社商品××の当月販売数量』とか『得意先◇◇のここ3か月の売上推移』とか『今期仕入の資金負担が昨対で7%増』など常に具体的で、経営判断などはこういったデータをもとに行うはずです。

そのナマ情報を受ける自分自身に、信念や予見などの要素が備わっているのはOKなのですが、情報自体に余計なバイアスがかかっていたり、勝手にスポイルされていると判断の邪魔になりますので、そういったものを見破り、切り捨てながら次の行動を決めているはずです。

これを個人の行動に置き換えてみます。
寒暖の差を感じたら衣服で調節し、外を歩いていて頭に雨水が当たり始めたら傘を差し、胃腸が弱っていると感じたら食物の摂り方を変えて回復を図るなど、個人の体感覚で己の置かれた状況を把握し、適切な判断でその後の行動を決定するのと同じです。

逆のたとえで、自分の身体が暑いか寒いかは温度計がないと判断できず、傘を差すかどうかは晴雨計を見ないと決められず、体調の悪化は病気が発症しないと認識できないようだと明らかに問題ありです。