前回、仕事が「自由度の高いゲーム」に近くなる条件として、魅力的な見返りがわかり易く示されていることを挙げました。
歩合制もそのひとつと言えるでしょう(頑張りに見合う内容ならば、ですが)。
成果報酬に漸進的な工夫をしている企業はたくさんあります。
上述の歩合制のような、増販への貢献に対するものもありますし、「改善提案コンテスト」のようなものを毎年開催するところもあります。
これらは、会社側の視点では継続的な制度であっても、社員側の視点では権利発生に対する一時金みたいなものでしょう。
一方、年俸制で半年ごとに評価査定面談をして年間収入を決定し、毎月の給与に反映させる方法(永続方式)を採っている会社もあります。
一時金形式の成果報酬は、永続方式よりも、「手柄」と「褒美」の関係性が明確ですが、射幸心を煽りすぎてしまうリスクもあります。
長く勤めてくれる社員を求めるなら、一時金形式の薬効の裏の毒性を知らねばなりません。
これは社員側からでも同じことが言えますので、またゲームに例えてみます。
長期プレイを楽しみたいなら、一過性な効果にすぎないイベントキャラの強化には要注意
つまり、長く愛顧してくれるファンのような社員でメンバーを固めたい経営者は、短期決戦に勝てばよいような人材登用/育成をするのではなく、自社の世界観に合う人材をじっくりと育て、メインストーリーへの参加に魅力を感じさせる工夫が必要になります。
ストーリーの進行と自己の成長がワンセットになっていて、成長することのメリットは、読み進むためのライセンスキーが得られることだとします。
次を読みたい気持ちが『ヤル気』。働き甲斐(働いた見返り)が『ライセンスキー』。
ここまではゲーム(消費)と同じ感覚ですが、ゲームではこの過程でお金が入ってこない(又は出ていくだけ)なのに対し、仕事なら、ヤル気とライセンスキーでストーリーを進行させた成果に対し、お金が支給される。
それならカロリー(収入)と栄養素(働き甲斐)のバランスが取れます。
お金ばかりが不自然に支給されるとか、キーを手にしていないのにページだけが早くめくられるとか、どれかひとつだけが早く得られる展開は、やはり無理があります。
ゲームでは、時間をかけて成長していく過程を課金(アイテムやキャラを有料で購入して一挙にパワーアップしたりすること)ですっ飛ばしているとやがてはマンネリ化し、プレイヤーはさらに強力な刺激を求めるようになります。
ゲームの運営会社は、利用者を引き付けておく次のネタ作りに頭を悩まし続けることになる。
彼らはそれが本業ですから仕方ありませんが、そうでない企業の経営者が、社員の育成や流動化防止目的で、奇をてらった報酬のネタに頭を悩ますのは賢明とは言えません。