第1回 <昇給のパワーバンドについて>

私が国家公務員Ⅲ種、行政事務A(今でいう高卒者一般職)で採用されたときの初任給は、忘れもしない113,500円でした。

その後、丸3年の専任期間を含めトータル10年ほど携わった給与のことを語ってみます。
※私の在籍時の記憶で書くため、現在の国家公務員給与制度とは内容が異なりますのであらかじめご承知おきください。

本俸(基本給)は、図表1《俸給表》で示されるように、職員の「職務の級」と、各級の中での「号俸」という階層によって構成されています。

「職務の級」というのはある程度役職と連動しますので、「係長」「課長」「部長」などを連想してもらえばよいかもしれません。

私のような高卒の新規採用者は係員(ヒラ)として1級の2号俸から始まり、1年ごとに1号俸上昇する「昇給」や、数年を経て1級上昇する「昇格」を繰り返します(図表2《昇給と昇格モデル》)が、4級に上がる30歳ごろまでは係員のままです。

昇給の都度、規定どおりの金額に上がるのですが、昇給額は一定ではなく、多少のバラつきがあります。
(図表2《昇給と昇格モデル》)

各級の号俸のうち、低位での昇給と、あまりに高位での昇給は、中間あたりの適度な号俸数でのそれに比べると、金額の上り幅が小さいのです。

たとえば、1号俸から2号俸への昇給で3~4千円台、「高位号俸」と呼ばれる二十何号俸とかでは2千円くらいの昇給幅ですが、中間あたりの号俸にいる人は1回の昇給で7~8千円、あるいはもっと上がることもあったと記憶しています(級により異なります)。

つまりここが、昇給におけるパワーバンド。
エンジンに例えると、もっとも加速が良い回転域にあたります(図表3《昇給のパワーバンド》)

一般的に、低位号俸にいるのは採用されたばかりの新人か、昇格ペースが早いⅠ種試験合格者(キャリア組)が、1つ上の級に上がった直後くらいです。

ノンキャリア組の場合はもう少しゆっくり昇格するのですが、号俸が上がりすぎてパワーバンドを外れる前にシフトアップ(昇格)し、常にパワーバンドの中にいるようにすると、収入面では圧倒的に有利です(図表3《昇給のパワーバンド》)

基本的に級号俸は、経験年数によって決まるのがセオリーでしたが、「不文律」に左右されることもありました。

たとえば、出先機関から本省(霞が関)への異動を拒むとヒラ(3級)のまま据え置かれるのもその一例で、そうなるとそのまま高位号俸に突入します。

手のひらのDB『まだ遅くない、地力の付け方(青森)』の中に登場する、社長に家具レンタル業を勧めた友人は、このルートをたどっているタイプです。

「4:まだ遅くない、地力の作り方(青森)」の記事一覧です。